リレーコラムについて

宝物の場所

福部明浩

細川美和子さんは、森の妖精のように

穏やかな小さな声で、ゆっくりと喋る人です。

 

ただですね、その妖精はブルドーザーを運転しています。

目指すべき方向に向い、周りの都合や事情なんかを

薙ぎ倒しながら、バキバキ進んでいくイメージです。

 

「みんな〜、あっちに素敵な場所があるよ〜♪」

バキバキッ ゴゴゴゴゴーーッ

 

そして、彼女が通った跡には

素敵な広告(美和子ロード)が出来上がっている。

そんなイメージです。

 

去年のACCの審査の時も、そう。

全ての審査が終わった後、座談会のような場で福里真一さんが言いました。

「今年の審査を決定づけた人が二人います。

タグボートの麻生さんと、細川美和子さんです」

そこにいた審査員全員が、「間違いない」と思ったはずです。

細川さんの意見は、声は小さいけれど

確かにそうだ!とみんなに思わせる説得力がある。

しかも彼女は、今年のACC審査委員長でもあります!(スゲェ)

 

そんな細川さんからもらった、リレーコラムのバトン。

コラムの末尾には、こう記されていました。

 

『広告業界全体を育てるために少しでも

種明かししてくれるといいのですが。』

 

種明かし。。。また無理難題を。

普段、自分がどんな風に広告を作っているかというのは、

普段、自分がどんな風に、トイレでお尻拭いてますか?

と聞かれるようなもんで

「他の人の、その瞬間、あんま見たことないからな〜」

というのが正直な感想です。

 

何が普通で、何が独自性があるかは

案外、本人ほど分からないものです。

 

ただ、一つ言えることがあるとしたら

僕は異常に文化度が低いということです。

細川さんのコラムの中の、演劇のくだりがまさにそれ。

マジで面白さが分からなかった。

 

読んでおくべき本、

観ておくべき映画や舞台、

聴いておくべき名盤。

それらへの造詣が、あまりに乏しいのが原因と思われます。

 

古川裕也さんの本とか読むと、

全ページ、「お前はバカか?」と言われてる気がします。

前提として語られている文化的コンテキストの

95分くらいが分からない。。。知らないのです。

 

ただ一方で、今ちょっと齧らせてもらっている

ユニクロの仕事で言うと、会長兼社長の柳井さんは

下記のように仰っています。

 

「服はファッション性が全てではない。

そんなことに興味がある人はごく一部。

服に興味がない人がストレスなく楽しめるのが本当に良い服だ。」

 

おそらく文化度に関しても、

似たようなことが言えるのかもしれません。

みんながみんな、センスのいい

カルチャーに触れて、生きてきたわけではない。

広告は、老若男女、広くメッセージを伝えるべきものだとすると、

なるべく誰にでもわかることを、真ん中に置く作業が大事。

あとは、それをセンスのいい演出家やAD

仕上げて貰えばいい、くらいに考えています。

 

アイデアって、尖らせていく作業はカッコいいんですど、逆に

広くしたり、分かりやすくしたりする作業はカッコ悪いものです。

え〜それ言います? そこまでやっちゃいます〜?

みたいな空気が会議全体に流れます。気まずい。

でも気にしない。

 

本来的に言えば、アイデアを人前で出したり、

言ったりするのは、かなり恥ずかしい行為です。

人前でお尻を拭くくらいには、恥ずかしい。

 

でも案外、宝物というものは、

その恥ずかしいくらいダサいものの中に

眠っているんじゃないかと、僕は思っています。

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