リレーコラムについて

最後の晩餐

飯田麻友

「最後の晩餐、何食べたい?」

という、ドがつくほど定番の質問がある。

 

実際、食べたいものを選べるようなシチュエーションで

亡くなることはほぼないので、

「宝くじ当たったらどうする?」

くらい、あまり意味がない質問に思えるが。

 

私は、この質問に、いつも「寿司」と答えている。

 

初めて広告の賞をいただいたとき、

師匠の櫻木さんに連れていっていただいたことがきっかけで、

まわらないお寿司の魅力に気づき、

自分ひとりでもカウンターの寿司屋に行くようになり。

気になるお店にピンを立てては、少しずつ開拓する、

「寿司活」は、いまや立派な趣味となった。

 

女ひとりだと、覚えてもらいやすく、

大将も気を遣って色々話してくれるので、意外と悪くない。

もちろん、予約のとれない有名店に行けるようなツテはないし、

そもそも最近は、高騰しすぎて足が遠ざかっているが、

その中でも比較的リーズナブルな寿司屋を探しては、たまの贅沢を楽しんでいる。

(おかげで、私の寿司好きを知る知人友人のみなさんは、

飲み行こうではなくて寿司行こうと誘ってくれたりする。

ありがとうございます!)

 

日本人は、焼肉派と寿司派に分かれると勝手に思っているが、

このように私は圧倒的に寿司派である。

この寿司愛はどこからくるのだろう、と思った時に、母の顔が浮かんだ。

 

わが家では、誕生日のお祝いに、

母がちらし寿司をつくってくれるのがお決まりだった。

 

料理が好きではない母が、誕生日だけは、

しいたけやら高野豆腐、にんじんを煮て、錦糸卵を焼いて、

いつもよりも手間をかけてちらし寿司をつくってくれる。

鮮やかな魚介がのっているわけではない。素朴なちらし寿司。

このちらし寿司が、大好きだった。

 

寿司は、私にとって、小さい頃から特別なものだった。

 

冒頭の質問には、本音で言えば、

「母のちらし寿司」と答えたい。

きっと叶わないけれど。

とりあえずレシピを教えてもらったが、

いつも目分量だというので、再現できるかはわからない。

 

あと何回、母のちらし寿司を食べられるんだろう。

もうだいぶいい年齢になったものの、誕生日を迎えるたびに思う。

あなたは、最後の晩餐に何が食べたいですか。

NO
年月日
名前
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