最近買った古い本
コピーライターの三島邦彦です。僕の本はさておき、お目にかけたい文章があります。
「コピーはいかに書くべきか
さて、コピーライティングである。
うまいコピーを書くにはどうしたらよいか。キャッチフレーズは何字くらいがよいかとか、ボディー・コピーは何字以上は読んでもらえないとか、という法則はないと考えてよろしい。要は、見込み客の注意をひき、聞いてもらいたいこと、聞いてもらわなければならないことだけを、正確に聞いてもらえればよいのである。もちろん、広告であるから、好感をもって聞いてもらえるようにする心くばりも必要である。コピーライティングについては、抽象的には、これ以上いうべきことは何もない。具体的にいおうとすれば、際限はない。」
「具体的にいおうとすれば、際限はない。」この一文が効いています。
この文章がいつ書かれたものかお分かりでしょうか。
答えは1965年。
電通が1965年に発行した『広告表現』という本の「コピーライティング」の項目にこの文が書かれています。それは東京オリンピックの翌年。まだ糸井重里さんと仲畑貴志さんが高校生だった時代。1955年から1973年まで続く高度成長のまさに真っ只中。
コピーライターブームが起きる前のこの時代に、今の時代のコピーを考えるヒントがあるのではないかという気がしています。コピーが爛熟する前のシンプルな状態というか。発熱する前のクールな状態というか。コピーライティングというビジネスを確立させようという意志というか。
この「コピーライティング」の項目の小見出しだけでもとても教訓的です。
- 余分なことを書くな
- 自分を売るな
- 相手の使うことばで話せ
- 製品にない利点を書くな
- おもしろく書け
- わからない文章を書くな
- できるだけたくさん書け
- なんでもためしてみよ
たしかに、これ以上に言うべきことはないかもしれないというくらいシンプルに整理されている。いまだに、というか、今だからこそ立ちかえりたい基本です。
この本には「最も少ない語数で、伝えるべきことのすべてを正しく伝える能力――それが優秀なコピーライターの必須条件である。」とも書かれているので、今日はここらへんでやめておきます。
ちなみに、1965年は秋山晶さんが「ホネケーキ以外はキレイに切れません」でTCC新人賞を取った年でもあります。すごすぎて、頭がくらくらしますよね。
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