石井裕也監督の映画の話:1
境治さんからバトンを受けました後藤国弘と申します。久しぶりに、このリレーコラムを書かせていただきます。せっかくのクリスマスの週なのに(20年前と変わらず)ためになる内容にはならないと思いますが、お許しくださいませ。
さて、コピーライターであれば、大好きな映画監督から台本が送られてきたら「どんなコピーを書こうか」と考えながら、それを楽しみに読ませてもらいますよね、というお話です。
石井裕也という映画監督がいます。『川の底からこんにちは』や『舟を編む』や『ぼくたちの家族』や『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』や『町田くんの世界』など大好きで。あるCMの演出を依頼した縁で知り合った後、年の差を越えて笑、いつもは仕事ぬきで仲よくしている石井監督から連絡がありました。2019年の秋のことです。「後藤さんに読んでほしい脚本があるんです。」ということで送られてきた台本は、『生きちゃった』という監督自身が書かれた新作の脚本でした。コピーの依頼だと思って喜んでいた僕に、石井監督は「この中のスーパーの店長役で、後藤さんに出演してほしいんです。」と。コピーの話は、少しも出ませんでした。
台本を読ませてもらうと、1シーンとはいえ主役の一人である女優さんとの台詞のやり取りがいくつかあり、ただ映り込むだけではなさそうです。この作品ではプロデューサーも兼ねる石井監督の考えがあっての指名だと思いましたし、シンプルな好奇心もありまして、つい引き受けてしまいました。けっして、出たがりなわけじゃないんです。石井監督の熱量が込められた脚本と、仲野太賀さん、大島優子さん、若葉竜也さん、パク・ジョンボムさん、毎熊克哉さん、レ・ロマネスクさん、芹澤興人さん、北村有起哉さん、原日出子さん、鶴見辰吾さん、伊佐山ひろ子さん、嶋田久作さんなど石井監督のもとに集まった魅力的なキャストの面々に、強烈な引力で惹きこまれてしまったのです。
俳優部の一員らしく、衣装合わせなどもさせてもらって迎えた撮影当日。ロケ場所は、とあるスーパーマーケットの事務所でした。大島優子さんと僕のシーンの撮影が始まります。これまでいろいろな映画やドラマのコピーを書かせてもらって多くの撮影現場も見てきたし、以前には某人気テレビ番組のドッキリ企画にCMプランナー役で出演した経験などもありまして、少しくらいはできるのではと思っていた自分が甘すぎました。「後藤さん、人と話す時に、そんなに相手の目を凝視しつづけますか?」など、石井監督からリアルなダメ出しと演技指導が入ります。目の前には、スーパーのパート店員役の大島さん。本当に、スゴい女優さんです。お前が言うなよっていう話ですが。僕のダメさと大島優子さんのスゴさが、さらに俳優?後藤国弘を追いつめていきます。・・・つづきは明日。
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